「今日で終わりかー。短かったなー。」

「え?」
「あら、何よ?」
「キョン君?」
「…?」

 

それは突然始まった。
いや、終わったのだ。

 

未来人も、宇宙人も、超能力者も、
神すらも知らなかった。

 

最初から始まっていた終わりへの道。

 

それが目に見えるものだったなら止められたのだろうか。

 

ラスト 

 

 

 




この部屋で唯一の普通の男子高校生が発した一言。
それを正しく理解できたのは誰もいなかった。

 

「ふーん、好きなドラマでも終わるわけ?」

部室の長はあまり興味もさそうに言った。

僕自身、彼の言う「終わり」ならそれくらいだろうなと高をくくっていた。
彼は僕や、長門さんや朝比奈さんのような特殊な人物ではないし、
涼宮さんのように突拍子もない考えかたもしない。

 

あくまで常識的な範囲で常識的な思考をし常識的な行動をする。
それが彼であり、「神」の鍵の役目でもある。

僕たちのように、常識を根底から覆す存在ではなかった。

 

そう思っていた。

だが、彼の口は僕たちが予想した言葉を出さなかった。

 

「あー。俺が終わりなんだ。」
「はぁ?!」

 

一瞬で彼の言葉を理解できるものはいなかった。
長門さんすらも、彼の言葉に戸惑いを隠せていない。

「あんたが終わりって…何よ?
 まさかSOS団を抜けるとか言うんじゃないでしょうね!?そんなの許すわけないでしょ!」

涼宮さんの声で我にかえる。

彼が「終わる」。
その言葉に予想以上に反応していた。
だが、そうだ。この世界は涼宮さんの意のままになる。
彼女ならたとえ彼が明日死ぬ病だとしても治すかもしれない。


彼がいなくなる、なんて、

 

あるはずが。



「ハルヒ、お前が許す許さないって話じゃないんだよ。」



どくり、と胸が疼くように痛んだ。
初めて見た、これは彼の「拒絶」だ。

今まで彼女のどんな傍若無人な言い分にもこんな態度はとったことはない。

それに…今の彼には表情がない。
涼宮さんは動揺している。
いけないな、閉鎖空間が現れる。

彼を止めなければ。

「…何よ、どういう意味?キョンのくせに、私に…。」

「だから、お前の問題じゃないんだよ。

 お前が口をはさむことじゃない。それだけだ。」

 

また、拒絶だ。
これでは確実に閉鎖空間が発生する。
まだ携帯は鳴らないが、時間の問題だろう。


なのに僕は、動けない。あの拒絶の意を向けられたくない。



「あの…私、わかりません。
 終わるってどういう事、なんですか?

 イヤです、キョン君がいなくなったりしたら。」

朝比奈さんが泣きそうな顔で彼に詰め寄る。
そうだ、止めてください。朝比奈さんなら彼も…。

 

だが、その望みはかなわなかった。
彼は朝比奈さんに視線を向け、また言った。表情を出す事もなく。

「わからなくていいんですよ。イヤと言われても仕方のない事ですから。」

「…え…。」
「ちょっと、キョン?」

 

何なんだ?誰だ、これは。


いつの間にか得体のしれない何かが、彼と入れ代わったのか?

そうとしか思えない。

 

彼はいつだって…誰にでも仕方なさそうに、笑って。
そこまで思った瞬間、彼は思い描いていたようないつもの笑顔にもどった。

 

「じゃ、またな。今日は帰るわ。」

 

「!」

その時、確かにまた、と言ったのに。
冷ややかな空気が心を覆うように不安になった。

 

「ちょっと待ちなさいよキョン!今の…!」
「ん?」

慌てて彼を呼びとめてくれたのは、また涼宮さんだった。
流石だな。僕は動くこともできないのに。

 

でも、先程のような拒絶が、彼女も怖いらしい。
最後まで言葉を出すことが出来なかった。

だが、彼が振り向いたのにホッとしたのか。
彼女にしては躊躇いながら言った。

 

「今の、冗談でしょ。

 せめて冗談だって言って帰りなさいよ…!
 言ったら帰ってもいいから…!」

 

「…。」

少し考えて、彼はまた「いつものように」笑った。

 

「ああ、冗談だよ。いつも驚かされてばかりじゃ不公平だもんな。」

 

「な…!」
「あ…。」

 

「じゃな♪」

 

バタン、とドアを締めて彼は部室から姿を消した。

 

「ちょっと!待ちなさいよ!団長を騙すなんて!!明日来たら死刑よ!死刑ー!!」

 

閉じたドアに、罵理雑言と、ありとあらゆる物を苛立ちのままに、彼女は投げ付けた。

 

その時も機関からの報せはなかった事に

僕が気付いたのは、少し後の事だった。


                             To be Continued…


はい、ハマって2週間。結局書いてしまいました。
というか結局見切り発車。笑ってください。これで連載何本目だよ;
しかもハルヒ初駄文だというのに薄暗いパラレルです。
最近こういうのしか考え付かない…末期ですかねー。

紹介文の通りこの話のキョンは人間じゃありません。
次の話で正体が出る予定です。

読んでくださった方、ありがとうございます。
こちらもゆっくり増やそうかと思いますので…。


戻る